いつもあの音が - 葉山いくみ/松岡禎丞.mp3

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いつもあの音が-葉山いくみ/松岡禎丞 (无损音质) 专享
[00:00.85]あの日、三年前のお舟引きの日 ...
[00:00.85]あの日、三年前のお舟引きの日
[00:08.28]イヤ...イヤ...イヤ...イヤヤヤヤヤ......
[00:20.07]耳の奥にこびり着いてしまった、あの日の音色 
[00:26.06]ざあざあ...ざあざあ...と、私を責める、波の音
[00:33.80]いまは、もうどこにもない、波の音
[00:44.62]ね、どうする?
[00:46.18]市役所の前のもんじゃ焼き、寄って帰ろうか?
[00:49.27]あれ、あそこ先週潰れてたって聞いたよ
[00:52.31]ええ、そうなの…ヤバい
[00:55.53]波七海ヤバい、
[00:57.12]どこも潰れまくりじゃん
[00:58.95]鴛大師と比べたら七海はずっといいよ
[01:01.61]まだ都会だし、お店もあるし、ね、千咲
[01:05.34]うん…
[01:06.72]どうした?
[01:07.84]あっ,ごめん,わたし今日は…
[01:10.64]夜ご飯の支度あるから,先に帰るね
[01:14.19]いつもそうやって付き合い悪いだから
[01:18.05]今日は帰る禁止だからね
[01:19.98]もう、優ちゃん、なにそれ
[01:23.22]よーす 、レディースよーす
[01:25.54]あっ、狭山、ね、木原君にちゃんと確認を取って合ってくれた?うん。
[01:31.45]確認って? 
[01:32.85]はい、千咲へ紡から伝言「今夜自分が晩飯作るから、羽伸ばしてこい」とさぁ
[01:39.84]えぇっ、ちょっと待って、そうな勝手に…
[01:42.70]いいじゃん!いつも家のことばかりに終われってさぁ、偶にはパーと遊ぼよ
[01:48.42]でも…あ、狭山も一緒にいかない?
[01:52.29]えっ、俺も..うん..どうすんか…
[01:56.74]ああ、信号、赤になちゃた
[02:00.71]とりあえず、どこ行くか決めよう
[02:03.11]どうする、ブラウニーファミレス
[02:06.06]千咲?
[02:08.90]わたしやっぱり帰る、ごめんね!
[02:12.17]うぇ..ちょっと、千咲、ああ、いちゃた
[02:16.88]じゃあ俺もやっぱ帰るは
[02:18.58]家の手伝い役から
[02:21.27]清木がかりすんなよ
[02:22.94]次遊んでやるからさぁ、じゃな
[02:28.61]なに偉そう、別にアンタとなんか頼まれたて遊びたくないっつーの
[02:33.70]そんなことない、頼まれなくでも遊びたい
[02:37.43]え、そうなの
[02:39.43]え、あや、噓、まさか安達狭山のこと…
[02:44.58]そ、そうだったんだ、ごめん、気付かなかった
[02:50.05]いいよ、なんか、言いづらかったし
[02:52.98]どうして、言ってよ、友達じゃん
[02:56.19]うん…でも、鴛大師からうちの高校来た子たちさぁ
[03:01.78]みんな仲良くてさぁ、張り込めないっていうか、羨ましいなんてと思って
[03:07.05]そんな、特に仲良くないよ、男子とかは特にそうだし
[03:11.95]千咲とちゃんと仲良くなったのだって中三になってからだもん
[03:16.40]ああ、どうしたの?
[03:19.22]うん、なんか前にね、私も似たようなこと思ったことあったなぁんて
[03:30.54]おまえ、学校で紡避けての?
[03:33.62]え、そのことないけど
[03:36.62]だって、行きも帰りも別じゃん
[03:39.30]同じ家から来るのにわざわざ面倒だも
[03:42.06]でも、変の噂されるも面倒だし
[03:46.91]一緒に暮らしてることが?今さらなんの感応言う奴なんてもいねえって
[03:52.77]いたとしても、俺ががつと交わしてやるしよう
[03:56.18]いいよう、本当、特に話すことないもん
[03:59.68]なんだそりゃ、倦怠期の夫婦みてえ
[04:03.24]そうじゃなくて、別に学校じゃなくても、家で話せばいいだけだし
[04:09.38]うんん、あ、そういやおまえ、進路調査表出した?
[04:15.51]もう、急に話変わるだから、まだだよ、狭山君は?
[04:21.48]どうせ俺は店を継ぐからさあ、それまでちょっと遊ばせてもらうと思ってだけど、
[04:26.71]親父近ごろ腰悪いし、まいっかって
[04:31.97]狭山君って、意外と大人だよね
[04:35.13]なに、俺の意外の魅力にドキとした?
[04:38.35]するわけないでしょう
[04:46.51]電車がトンネルに入ると、一瞬目を閉じてしまう癖がついた
[04:54.94]耳をじっと澄ます,トンネルの先に見えるのもの、
[05:01.05]それに動揺しない、心の準備をする
[05:06.79]トンネルを向けると、そこに広がるのは
[05:11.32]鴛大師、鴛大師です
[05:17.45]
[05:21.77]時を止めった、凪いだ海
[05:27.97]
[05:30.66]ただいま!
[05:32.41]なんだ、早いな
[05:34.09]もう、紡、料理当番は私なんだから
[05:37.62]偶には変わるよ
[05:39.70]いいの、私がやるから、ほら、どいて、取り敢えず着替えてきて
[05:44.82]信用ないな、俺もそれなりにはできるけど、料理
[05:49.17]分かってます、分かってるけど、でも、いいから私にやらせる
[05:56.61]千咲…
[05:58.25]賞味期限ぎりぎりの食材とか、明日の献立で使えたいものとか、いろいろあるだから
[06:04.15]紡に料理されると、予定が全部繰るちゃうの、ほら
[06:08.02]そうか、じゃあ俺、爺さん手伝ってくる
[06:13.56]うん、直ぐ出来るから
[06:21.07]強引すぎたかな
[06:24.42]お味噌汁はもうできてるんだ、ちょっと味に
[06:33.32]悔しいな、おいしい
[06:39.51]そう、紡を作るお味噌汁はわたしのよりずっとおいしい
[06:46.60]小さい頃から、ずっとお爺ちゃんの手伝いをしてだから
[06:53.52]嫌になちゃうな、自分のこと
[06:58.35]私なんて、家にいるときは何もできなかった
[07:02.67]洗濯や掃除を手伝いくらいで、家事はお母さんに頼りっぱなしだった
[07:10.60]はい、ご飯お待たせ
[07:13.90]あ、美味しそう!
[07:15.13]母さんのあらの煮付けは最高だからな
[07:18.10]うん、私も大好き
[07:20.52]だったら教えてあげようか、作り方
[07:23.66]あらの煮付けの?
[07:24.65]そう、千咲女の子なんだしね、少しは料理覚えたほうがいいはよ
[07:29.94]将来のお嫁さんになった時
[07:32.13]ええ、お嫁さん、考えられないよ
[07:36.05]そうだ千咲の言う通り、まだ当分そうなものは覚えなくでいい
[07:40.76]いや、ずっと覚えなくでいい
[07:43.58]もう、お父さんは
[07:48.02]どうして、もっとちゃんとお手伝いして来なかっただろう
[07:53.32]何気ない日々がこんなにも大切なものだったなんて
[07:58.41]あの頃は気づかなくで
[08:04.17]嫌だ、お玉落としちゃった、ダメだなあもう
[08:11.87]えっと、お味噌汁があるから、後はお魚を用意いて
[08:16.96]ほうれん草ごま汚しに
[08:22.98]また、あの波の音
[08:29.16]いただきます
[08:30.32]うん、やっぱお味噌汁おいしい
[08:38.63]魚もうまいよ
[08:39.65]それは魚自体がおいしいから
[08:42.04]カラメルは良い按配にあけてる
[08:44.81]ありがとう
[08:48.36]千咲
[08:49.64]うん?おかわり?
[08:51.62]進路調査表、もう書いたが?
[08:55.30]進路か、そうか、そうな時期が
[08:59.49]紡ぐ、そうな話今しなくでも
[09:03.15]おまえ、卒業したらどうする
[09:05.15]私は、その、昇職するから
[09:10.21]昇職、進学はしないのか?
[09:14.89]うん、私ないから、将来なりたいものとか、やりたいこととか、特に…だから
[09:22.46]余計なことは気にしなくていい
[09:26.88]努めたいところがあるならそれでいいか
[09:29.09]うん…
[09:34.46]
[09:41.11]紡、いい?あぁ
[09:45.76]勉強してた?
[09:48.28]あぁ、どうした?
[09:51.27]進路調査表のこと、何でおじいちゃんの前で言うの?
[09:56.14]いつか言うはなきゃならないだし
[09:58.73]それに、じいさんの前に言うはなきゃ勝手に決めてだろう
[10:03.87]中学の卒業文章、お前書いてたよな、将来の夢看護師になりたいって
[10:11.33]あれは違う、空欄で出すにはいけないし、なんか書かないといけないから、取り敢えず…
[10:19.09]何もやりたいことないなら、なおさら進学した方がいいじゃないのか
[10:23.71]でも、お舟引きの日から、魚も思うように取れなくなって、生活だって大変なのに
[10:30.27]言ってだろう、爺さん、余計な心配はするなって、俺だって大学行かせてもらうだし
[10:36.87]紡と私は違うよ、だって他人の私がそこまでしてもらうことなんて出来ないよ
[10:44.51]他人か、あのさぁ、約束してくれ、爺さんの前でそれ言うはないでくれ
[10:57.73]悪かったよ、相談もなしに進路のこと勝手に切り出して、話はそれだけ?
[11:04.74]うんん…それだけ
[11:07.21]じゃあ、おやすみ
[11:09.68]おやすみなさい…
[11:14.11]紡、怒った目、してた…
[11:21.24]これで洗い物全部かな
[11:25.23]おじいちゃんも、紡も、私のこと大切にしてくれて、私のこと考えてくれて
[11:32.44]なのにわたしは
[11:43.08]気づくと、響いてくる波の音、後悔に包まれた時に必ず聞こえてくる
[11:53.42]耳の奥にこびり着いた音、そして私はあの日に帰る
[12:06.22]要の気持ちを、気づつけてしまったまま、愛花の純粋さに引け目を感じたまま
[12:15.78]光に対して勝手の思いをぶつけてしまったまま
[12:22.21]あの日から海は凪いだ
[12:27.19]波の立たない海、音のしない海
[12:32.25]なのに記憶の中の波の音は、今も私を責め続ける
[12:39.85]止めどなく押し寄せる後悔の波が、ざあざあ…ざあざあ…ざあざあ…
[12:54.91]おはよう
[12:56.25]おはよう、紡今朝はもう学校行くの?
[13:00.42]あ、日直だから
[13:02.56]じゃあ私が一歩後のバスで行く
[13:05.52]そっかぁ、千咲、偶には一緒に行かないか?
[13:12.00]え?
[13:13.71]否、いい
[13:17.60]紡
[13:24.07]おじいちゃん、お疲れ様
[13:26.24]お茶を忘れていたでしょう、台所に水筒を置いてだから持って来たの
[13:32.20]悪いな
[13:33.68]どうしたの、顔色悪いみたい
[13:36.20]そうか?
[13:38.33]おじいちゃん、今日はもう家に帰ってゆっくりしてた方がいいよう
[13:43.18]千咲、昨夜の話だが
[13:47.65]それはまた後で、そろそろバス来るから、じゃあ行ってきます
[13:59.46]
[14:01.96]安達さん今日休みだったね
[14:04.55]昨日は元気だったのに
[14:06.15]どうしちゃったのかな
[14:07.04]あ、そうか、安達千咲には電話してないか
[14:12.25]そうだよね、木原君と一緒の家だもんね
[14:15.29]えっ、何があったの?
[14:18.00]安達さあ、狭山に告白したんだって、昨日の夜電話で
[14:24.92]シー、声大きい
[14:28.73]でも振られちゃったみたいでさあ、狭山と顔合わせたくないから休むかもって
[14:36.38]だから多分今日それ
[14:39.07]あ、そうなんだ、そうか
[14:44.49]安達かわいいのになあ、狭山のくせに何偉そうに…
[14:49.82]お前こそ何様だよう、その言いぐさ
[14:53.90]狭山、木原君?
[14:56.41]紡
[14:58.21]ちょっと、何で盗み聞きするわけ?
[15:01.02]昇降口で堂々と喋ってたら嫌でも聞こえるっつーの
[15:04.94]しかも人の悪口大声でよ
[15:07.77]だって、あんたいつも彼女欲しいってうるさかったじゃん
[15:13.26]だったら付き合ってあげたっていいのに、けち
[15:16.42]けちって、お前なん
[15:19.95]ああ、もういい、行こう千咲
[15:22.53]あ、優ちゃん待って
[15:27.22]何だってだよう、女って面倒くせぇ
[15:31.98]確かに言ってだなあ、誰でもいいから彼女欲しいって、お前
[15:38.82]まぁ、言ってだけどよ、でも、告白ってやつさぁ、本気で付き合ってみたら気が変わっただよなぁ
[15:54.48]なんか本気で好いてすれてのに、そうゆう半端な気持ちで付き合うなってさぁ
[16:01.39]好きでもないのに、何っつか申し訳ないっつか悪いっつかさあ
[16:03.61]そうか、なるほど
[16:06.65]なんだよ、おまえだったらどうなの
[16:09.07]いや、そもそも誰でもいいから付き合いたいなって思ったことないから
[16:14.49]あぁ、はいはい、男前は言う事違うね
[16:18.32]そうか、お前の方が男前だと思うけど
[16:21.92]お前はどうしてと真顔で斜め上のことを言うだよう
[16:29.30]
[16:31.40]言ってたんだ安達、浜中から来た子たちは仲が良くって
[16:36.11]入り込めない気がするって
[16:39.16]だから私たちにも、狭山が好きって言い出せなかったみたい
[16:44.36]そうなん
[16:45.96]でもその気持ち少し分かるような気がするだあ
[16:50.72]私も伊佐木君 、ううん、千咲や汐鹿生の皆は浜中に来た時
[16:58.07]あの中には入れないなって思ったから
[17:01.12]私さあ、伊佐木君のこといいなあって思ってたんだ
[17:08.33]そうだったんだ、優ちゃん
[17:11.02]ああ、そうな、そこまで本気で訳じゃなかったんだけどさあ
[17:15.14]伊佐木君人気なんだからなんとなく
[17:19.88]でもさあ、あんなことになんちゃって
[17:24.28]あ、ごめん、私変なこと言って
[17:27.60]ううん、いいの
[17:29.82]千咲の方が、私なんかより何倍も、
[17:33.26]比べ物にならないぐらいづらいのに、本当ごめん
[17:38.22]気にしないで、大丈夫だから
[17:41.17]千咲
[17:45.66]じゃあまた明日ね
[17:47.38]うん、また明日
[17:52.96]お舟引きの日の波の音が、こびりついたままなのは
[17:58.38]わたしだけじゃないかもしれない
[18:02.60]千咲ちゃん、ちょっとよっかたわ
[18:05.04]叔母さん
[18:06.51]これね、ジャガイモとか、アスパラとか、
[18:10.91]農家の親戚がたくさん送って来たのよ
[18:14.26]おじいさんに食べさせて上げて
[18:17.08]すごい、ありがとうございます
[18:20.56]あら、なに、アンタ元気ないじゃない
[18:24.24]えぇ、そうですか
[18:27.46]アンタも食べなさいね野菜
[18:30.32]若い女の子はダイエットとか何とかすぐに言うけど、栄養付けないと
[18:35.78]あ、はい
[18:38.08]それじゃあ
[18:42.44]ダメだなんこれじゃあ
[18:44.81]おじいちゃんに心配かけじゃぁ
[18:51.46]
[18:53.30]おじいちゃん、隣のおばあさんがこれ
[18:57.99]おじいちゃん、嫌だ、しっかりして、どうしたの
[19:06.43]おじいちゃん、おじいちゃん…
[19:13.24]ご家族の方はここでお待ちください
[19:15.38]いや、おじいちゃんを連れて行かないで
[19:17.99]千咲、落ち着け
[19:19.76]行かないで、私からもう誰も奪っていかないで
[19:28.84]大丈夫だ、大丈夫だ
[19:35.38]
[19:46.94]手術時間かかってるな
[19:51.49]私どうしよう
[19:55.66]朝気づいてたの、私、おじいちゃんが顔色悪かったの、気づいてたのに
[20:05.34]千咲
[20:06.88]どうしてあの時病院に行こうって、私
[20:13.27]木原さん、ちょっといいですか
[20:15.48]はい
[20:16.43]紡
[20:17.32]お前はここで待ってろう
[20:20.64]でも…
[20:21.35]いいから
[20:27.48]一人取り残された廊下で気配を感じた
[20:34.25]また、あの音
[20:37.54]後悔の波の音が聞こえてくる気配が
[20:46.92]その時聞こえてきたのは
[20:50.02]お舟引きの日のあの激しい波じゃなく
[20:55.54]おじいちゃんの船の音
[21:02.45]うちに来るといい
[21:04.78]俺も海から来た
[21:07.99]汐鹿生に戻れなくなった私を
[21:11.22]おじいちゃんが家に迎えてくれて
[21:14.77]紡も当たり前みたいに私を受け入れてくれて
[21:22.34]凪いだ海は怖かったけれど
[21:26.72]おじいちゃんの船がお漁行く、その間だけは、穏やかに感じられた
[21:34.87]おじいちゃん、紡、ご飯できたよう
[21:41.93]あの日から私はずっと大切な人たちと離れてしまった
[21:49.29]後悔の中にいたと思ってた
[21:53.20]でもその間に積み重ねてきたものがあったんだ
[22:01.52]おじいちゃんと、紡との日々
[22:10.73]おじいちゃん
[22:12.70]波の音は後悔の音
[22:17.26]でも、もし、もし今
[22:21.70]おじいちゃんに何かあったら
[22:28.48]そうしたら
[22:30.36]今度はあの船のエンジン音も
[22:34.40]後悔の音になってしまうのかもしれない
[22:40.51]紡、紡、おじいちゃんは?
[22:44.70]大丈夫だ、手術成功したって
[22:52.65]千咲、どうした?立ってるか?
[22:58.13]よっかた、よっかた
[23:06.61]泣きすぎだぞ、お前
[23:10.95]だって、だって
[23:16.97]紡は涙する私の頭をそっと撫でてくれた
[23:23.92]その手は、とても大きくて
[23:27.75]指の節がごつごつしていて
[23:30.78]日に焼けていて
[23:33.73]紡の手、おじいちゃんの手に似てる
[23:38.90]そうか
[23:42.25]暖かくて、とても落ち着くて
[23:51.48]
[23:53.13]あ、朝日が眩しい
[23:56.55]あ、今日学校どうする?
[24:00.45]うん、休むよう
[24:02.47]お爺ちゃんの入院の準備しなくちゃ
[24:05.16]パジャマとかタオルとか
[24:06.64]そうだなぁ、俺も手伝う
[24:12.42]私ね、もう後悔したくないだ
[24:16.36]後悔?
[24:17.47]んん、あの時、あしておけば良かったとか
[24:22.39]こんなこと言うじゃなかったとか
[24:25.22]汐鹿生のこと言ってるのか
[24:29.80]汐鹿生の皆が戻ってくるって、信じてないのか
[24:34.15]そうなん、信じてるよ
[24:35.96]だったら、後悔も何もないだろう
[24:38.90]取り返しのつかないことなんてまだ何もない
[24:43.05]紡、そっか、そうだよね
[24:51.76]高台の病院から見える海は
[24:54.42]朝日に輝いて
[24:56.97]お爺ちゃんの船が通っていなくでも
[24:59.75]不思議と怖くなくて
[25:03.25]私、お爺ちゃんが元気になったら、お願いしてみようと思う
[25:09.46]看護士になりたいって
[25:12.46]千咲
[25:13.72]あああ、バイトとか奨学金とかいろいろ考えて
[25:16.86]なるべく迷惑かけないように
[25:18.99]いや、きっと爺さん、喜ぶと思うよ
[25:24.43]他人なんかじゃないから
[25:28.13]喜ぶよ
[25:29.90]だといいな
[25:31.98]絶対喜ぶ
[25:36.31]これから先、私は何度あの波の音を聞くことになるだろう
[25:43.42]分からないけれど、でも、それでも今は思う
[25:50.33]この日の朝日を、忘れたくないって
[25:59.10]
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